現代版7つのイギリス階級制度
イギリスの映画といえば、「ハリーポッター」や「ダウントン・アビー」など、クラシカルなイメージがありますね。その他にも、有名な映画でいえば、「ラブ・アクチュアリー」や「リトル・ダンサー」や「トレインスポッティング」など、現代映画の中でも階級や格差を感じる作品が多くあります。
イギリスでは、法律上の「階級制度」はありません。貴族や労働階級などの階級制度は、18世紀後半の産業革命後から始まりました。政治が安定してきた頃、議会での実質的な権力を貴族が持っていたことが始まりです。19世紀から20世紀にかけてさらに、階級が別れていきます。当時の階級制度は、上流階級、中流階級、労働者階級に別れています。
上流階級は、世襲的なのではっきりと別れていますが、中流〜下流階級は時代によって変化しています。現在では階級制度はないものの、2013年にBBCによって行われた「the Great British Class Survey(GBCS)」では、イギリス国民のアンケートにより、経済的資産(収入と財産)、文化的資産(文化的関心や活動)、社会的資産(対人関係における社会的地位)にもとづいて7つの階級があると報道されました。
階級 | % | 主な職業 |
---|---|---|
エリート階級(Elite) | 上位6% | CEO、通信・IT関係のCEO、銀行員、大学教授、医師、裁判官、弁護士 |
確立した中流階級 (Established Middle Class) |
25% | 科学者、作業療法士、助産師、専門家 |
テクニカル中流階級 (Technical Middle Class) |
6% | パイロット、薬剤師、研究職 |
新しい豊かな労働者 (New Affluent Workers) |
15% | 電機技師、配管工、郵便局員、販売員、不動産系、料理アシスタント、 |
伝統的な労働者階級 (Traditional Working Class) |
14% | 介護労働者、清掃員、トラック運転手 |
振興サービス労働者階級 (Emergent Service Workers) |
19% | 料理人、バーテンダー、看護助手、介護福祉士、ミュージシャン |
プレカリアートまたは不安定な労働者 (Precariant, or precarious proletariant) |
15% | 清掃員、小売店のレジ係、無職 |
従来の階級制度で上層中流階級(The Upper Middle Class)に当たる医師や弁護士などの知識労働者がエリート階級に分類され、上流階級と上層中流階級の境があいまいになってきています。
中層中流階級〜下層中流階級と労働階級では上下関係ではなく、職業別にクラス分けされています。
従来の階級制度に基づく教育や家柄は影響し、イギリス人の中でもいまだに階級で分ける意識は根付いていますが、新しいサービスや職業が現れたことによって格差は狭まった印象があります。
現代版イギリスの階級意識がわかるイギリス映画
イギリスを舞台にした現代の映画の中でも、このような階級を意識することができます。また、住むエリアや住居の種類などでも背景がわかることがイギリス映画の面白いところでもあります。
ブリジット・ジョーンズの日記
映画の主人公ブリジットは、ちょっと冴えないアラサー女子ですが、ロンドンの出版社で働き、実家の毎年恒例のお正月パーティで弁護士として働くマークと出会います。だいたい同じ階級同士で交流するので、ブリジットの実家もマークと同じレベルだと考えられます。
現代版のイギリスの階級制度に当てはめると、弁護士として働くマークは明らかにエリート階級、マークとブリジットを取り合うライバルの出版社の社長ダニエルもエリートまたはテクニカル中流階級くらいです。マークとダニエルはケンブリッジの同級生で深い因縁がありました。ケンブリッジやオックスフォード大学に進学するのも上流〜中流階級の人々が大半なので、ブリジットはイケメンでエリートな男性からアプローチを受けていることになります。
また、家賃が高いロンドンでは一つのフラット(アパート)を数人でシェアするのが基本です。ブリジットの通勤風景を見ると、ブリジットはサウスロンドンで一人暮らしをし、ロンドンブリッジを渡ってロンドン中心部へ徒歩で通えるほどの立地に住んでいます。
物語とは言え、ブリジットはそれなりの家柄の女性であることがわかります。
ラブ・アクチュアリー
映画には5組みのカップルが登場します。とくに注目したいのが、ヒューグラント演じる新米大統領デイビッドと首相公邸の給仕ナタリーとの恋です。
新大統領のデイビッドはもちろんエリート階級です。一方ナタリーは労働階級の出身、話す英語もポッシュな英語とは程遠いです。そんな2人の格差恋に注目です。
キングスマン
映画の主人公の青年エグジーは、幼い頃に父親を亡くし、母親は情婦として働いています。プレカリアート、または慢性的な失業状態の家に育ちます。
チンピラとつるむ毎日のエグジーの前に、ビシッとしたスーツを着こなしたハリーがある日現れます。ハリーに推薦され、スパイ集団キングスマンに推薦されたエグジーは、父親がかつてキングスマンのエリートであったことを知ります。
キングスマンで過ごすうちに、労働階級で落ちぶれていたエグジーが自立していくストーリーです。